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2006年12月09日

漢字とハングル(諺文・オンモン)<承前>

前の《“なぜ漢字から朝鮮に適した文字は生まれなかったのか?” ― 朝鮮の諺文(オンモン)》の続きです。

朝鮮は、日本のように漢字を“母国語化”したり、漢字から“仮名”を生み出すようなことはありませんでした。今回も、大島正二さんの『漢字伝来』から ―

そして李氏朝鮮のときに大英断のもと、国字として新たに〈諺文(オンモン)〉(いま、ハングルと呼ぶ。)が創られたのであった。

ハングルが発明された李氏朝鮮の前の王朝であった高麗(こうらい)のときに、朝鮮はモンゴルの支配下におかれ、モンゴルから直接的な影響を受けた。モンゴルは、(…)ウイグル文字から造ったウイグル系文字とパスパ文字の二つの文字を造ったが、これらはいずれもセム起源のアルファベット、つまり一字一音素の単音文字から発したものである。朝鮮はモンゴルを媒介としてこの単音文字の原理を知った。そして、ハングルの特徴である音節単位は漢字がモデルとなった。文化史的にみてきわめて自然である。
(p.151)

ハングルはアルファベットのようでいて、“漢字語”をみれば漢字のようでもあるという印象は、まさに“二つの文字原理”をうちに含んでいたからなのですね。

このようなハングルがどのような過程で考案されたかは記録としてのこっていない。ただ、その字形が他の文字の借用ではなく、まったく独創によるものであり、その考案の過程には朝鮮語音の精密な観察があったこと、その製字にあたっては中国音韻学の体系が十分に参考とされていることは明らかである。

ハングル入門書でかならずお目にかかる「反切表」の“カ・ナ・ダ・ラ…”は、中国語と深いつながりがあるということでしょうか。まさに当時の叡知を結集して独自の文字をつくりだしたということが分ります。

しかし、このハングルという文字は、誕生のときからすでに暗い運命をせおっていた。そもそも、朝鮮で漢字以外の文字が生まれることなど思いもよらぬことであった。

ハングルが創られたとき、当時のそうそうたる学者は猛烈に反対した。

その理由の一つは、中国文化に対するあこがれと、明の宮廷に対する遠慮から、新しい文字を創るなどは中国文化からの逸脱であり、中国政府の機嫌をそこねる恐れがあること、もう一つの理由は、新しく別に文字を創らなくても、〈吏読〉を使えばよいではないか、ということであった。世宗は反対をおしきってハングルの公布にふみきった。創られてから三年もたった世宗28年(1446)のことである。

世宗が亡くなってから、その子の世祖も父の遺志をつぎ、ハングルによる数々の仏典の翻訳を刊行するなどして、しだいに国字として定着するかにみえたが、やがて反動がおこり、ハングルは女性のあいだだけで用いられ、また啓蒙的なものや外国語の教育などに使われることがほとんどだった。

上に言う〈吏読〉とは、漢文で書かれた本文に朝鮮語の助詞や助動詞にあたる漢字を加えたものだそうです。そうした点においては朝鮮語と日本語はよく似ているように感じます。

ハングルに対する冷遇はその後ながくつづいた。そしてこの文字が朝鮮民族の文字として陽の目をみるのは、第二次世界大戦が終わって日本の植民地から解放されてからのことである。

ハングルの歴史は、朝鮮の歴史を物語っているのですね。

前回の記事で引用させていただいた“ちょん・ひょんしる”さんの訳が掲載されている《ふくかんねっと》に、《漢字とハングル》という記事が掲載されています。

現代の韓国における「漢字とハングルの関係」が垣間見えて興味深い内容でした。
 
posted by sakae at 23:56 | Comment(2) | TrackBack(2) |
この記事へのコメント
日々の生活に当たり前のように存在する文字ですが、こうして拝見していると、生みの苦しみも伝わってきます。
様々な事柄を後につないでいくためにも大切な文字ですが、それは誰でも使えて浸透していかなくてはいけないものですね。

こうした中で、お話のようにアルファベットのようでいて漢字のようでもあるというハングル。 画期的な韓国の文字ですが、その公布当時15世紀の国内の様子はどんなだったのでしょうか。
片側しか見ていなかったのですが、中国との関係や歴史にも気づかされます。

更にご紹介していただいた《ふくかんねっと》の《漢字とハングル》。
漢字の教育がなされない空白の28年間〜その時代の方針で、文字の立場も変わっていることに驚きました。

漢字がその国によって”変身”していることも面白いと思います。 文字は”生きている”のですね。
Posted by vita88 at 2006年12月10日 00:30
《ふくかんねっと》の“ちょん・ひょんしる”さんのエッセイ・コラム、中国人と韓国人と日本人の三人が筆談をすると..などなど、どれも興味深く、面白く拝見しました。

<<漢字音の語彙も助かる、でも怠ける私>>には...
日本語を学ぶ時、もっとも苦労したのは漢字だ。
日本語を学ぶようになるまで、自分の名前すら漢字で書けなかった。学校で少し学んだ記憶はあるが、大学受験から漢字が除外されたこともあって、しっかり学ばなかった。
私の場合、祖父から少し漢字を習っていたことが幸いだった。韓国語で漢字の読み方は一字一音がほとんどだ。日本語のように、漢字を訓読みする読み方はない。
...韓国でも世代によって漢字の学習程度に大きな差がある。
「最初から漢字を習った50代、60代と、漢字を全く知らない20代、30代とで大きな差があるんです。40代の私は、ある程度読めるからちょうど中間の世代ですね」...

<承前>とあります。つづいてのお話を楽しみにしております♪
Posted by saki at 2006年12月10日 02:10
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