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2006年10月07日

「時調(シジョ)」の世界 ― ユン・ハクジュン『朝鮮の詩ごころ』

何度かふれている川村さんの『妓生』にとりあげられている本 ―



図書館で借りることができて例によってぺらぺらと拾い読みしていたのですが、この本はぼくには必読書のように感じられ、Amazonは在庫切れで定価(980円)より少し高かったのですがユーズド商品を購入しました。

第II章が‘黄真伊(ホァン・ジニ)の生涯と「時調」’(p.30〜48)にあてられていますが、今回は別の箇所から ―

黄真伊や洪娘、寒雨ら多くの妓女や無名の人たちが時調を詠むようになったということは、時調がすでに儒者たちの専用物ではなくなったことを意味するのである。また宋純(ソン・スン)が詩壇に登場することによって、それまでのように時調が儒者たちのたんなる余技としてだけでなく、また、知識人や風流人のアクセサリー的なものでもなく、人生を観照し、愛情をうたい、人情の機微をうたうといういわば作者の思想をもり込む本格的な時調作家の誕生を見ることができる。

それまではどちらかといえば、漢詩が主でハングルによる詩作はうとんじられていた。それが宋純、黄真伊以後、ハングルによる時調や歌詞文学が勃興しはじめた。鄭(チョン)チョル、朴仁老、尹善道などのすぐれた文学者たちが続々とあらわれ中世文学の黄金期を築くのである。
(p.147〜148)


ファン・ジニ(黄真伊)が‘時調の世界’において果たした役割というのは、漢詩の世界とは別にかな文学を成立させた日本の平安女流作家たちを連想させます。

↑の引用に出てきた、‘鄭(チョン)チョル’とい名前は、先日の記事《ムン・グンニョン ― 演じたいのは“ファン・ジニ”!?》のなかで登場しました。そう、グニョンさんの敬愛してやまない詩人です。

本のなかでは第IX章‘鄭チョルの行動と文学’(p.232〜260)でおもに取り上げられています。上記のハングルについても関連する部分を引用します。

鄭チョル(1536〜1593)は尹善道(ユン・ソンド)とともに李朝中期の代表的な詩人の一人である。

もし、中世朝鮮に鄭チョルと尹善道という文学者がいなかったとしたら、朝鮮文学の流れは果たしてどうなっただろうかと、私はしばしば思うことがある。

このような仮定の設定は、それ自体愚かなことかも知れないが、しかし17世紀の中葉以後、許(ホ)ギュンの有名な小説『洪吉童伝』をはじめ金万重(キム・マンジュン)の『謝氏南征記』や『九雲夢』、そして日本でも多少は知られている『春香伝』等々、あの華麗な「ハングル文学」の隆盛について考える場合、純朝鮮語を駆使した鄭チョルの先駆的な意味を考えずにはおられないからである。

私は前章で、女流詩人たちのうたに朝鮮語の美しさ、すばらしさを発見したと述べたが、それは鄭チョル、尹善道によって大成されたといえよう。
(p.233)

鄭チョルは「国文学の巨星」とも言われ、その詩歌集『松江歌辞』は「古くから多くの人びとによって絶賛されてきた」のだそうです。

グニョンさんが惚れ込むのも、むべなるかなです^^

<つづく>

posted by sakae at 22:31 | Comment(2) | TrackBack(0) | 【ファン・ジニ】
この記事へのコメント
その短さの中に風景も心情も凝縮され、言葉ひとつの中に思いの丈を籠める…。
何という表現力なのでしょう。
黄真伊という女性のおかげで時調という素晴らしい詩の一端に触れることが出来ました。

本の中で語られる時調の言葉も、男性と女性のそれでは微妙に使われ方が違い
それも個性のひとつなのでしょう。

これほど花鳥風月をも美しく詠ってくれる時調。
ファン・ジニやそしてグニョンさんのように若い方も惹かれることがうなずけます。
Posted by vita88 at 2006年10月07日 22:55
自然に耳を澄まし、その景観を友とする。閑寂を好み、人生を達観し、人情の機微に心の目を凝らす。市井の臣まで降りてきた時調の一字一句にはその人がその思想が凝縮されているのですね。漢詩中心の詩作にハングルによる時調や歌詞文学という流れを作った黄真伊と鄭チョル。

sakaeさんを通じて、ジウォンさんが黄真伊に繋げて下さって時調に出会い、黄真伊を演じたいとおっしゃるグニョンさんのおかげで鄭チョルを知り...中世文学の世界へジウォンさんとグニョンさんに優しく誘われているような。

<つづく>が楽しみです。
Posted by saki at 2006年10月08日 01:47
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